それぞれの門出
モルド・スークに到着すると、既にケリッグが討伐の報告を済ませていてくれたみたいだった。
テイナーにまで改めてお礼を言われちゃった。
そして……テイナーのこれからの話。
今後やりたいことがあるのかとケリッグに問われ、テイナーはしっかりと答えた。
「ふたりのおかげでそれなりに戦える自信がついた」「その力を活かして生きていきたい」、って。
うん、大賛成だよ!
もちろんテイナーが決めたことなら何でも応援するつもりだった。
それでもやっぱり、その魔力を活かさないのはもったいないって思うんだ。
きっとナイルベルトにも負けない、すごい大魔導士になれるって思う。
がんばれ、テイナー。
よーし!ではこれにて一件落着~
と思ったら、ケリッグはケリッグで秘めていた案があるみたいで……
え?うにに相談??
金策のことなら教えられないよ、一番の金策は金策の方法を人に教えないことだかr
……なーんだ、そんなことか。
ケリッグは、「今回の賞金を、テイナーがこの時代で生きていくために譲りたい」って考えてたんだって。
もうね……どこまでいい人なのよあなたは;;
こんなお人好しで、よく今まで賞金稼ぎで生計立ててこれたなあって思うくらい。
まあそれに賛同しちゃう自分も、たいがいだとは思うけどさw
ひとつ貸しだからね!
いや冗談通じないかよww
仲間から報酬なんか取るわけないじゃん><
必要な時があれば、手を貸してもらうことはあるかもだけどね。
そん時のための「貸し」ってことで。
それにケリッグも言ってたけど、生きていくには「先立つもの」だって必要だ。
みんなで助け合い~って綺麗事だけで生きていければ世話ないけど、現実はそう甘くないからね。。
このお金は、テイナーの生活基盤を整えるのに使ってもらえたらなって思うのだ。
そしてケリッグの案はまだあった。
今度は魔道士であるテイナーに、って……え?え??
『弓の腕には自信ありだが、魔法には疎い賞金稼ぎがいてね。
そいつが相棒を探しているんだが……興味はないか?』
うああああああ
まじかまじか!!!!(語彙力)
一人前の魔道士として、テイナーを相棒にしたかったんだね!
ええええもう何このいい話;;
泣いていい?ダメでも泣くけど;;
ケリッグの新たな相棒も決まったところで、クリスタリウムで合流することに。
……報酬、ほんとにいらないのになあ。
でも最後の最後でとんずらってわけにもいかないし、とりあえず行くだけ行ってみよっか。
彷徨う階段亭へ
……思えば、ここからすべてが始まったんだね。
ケリッグとここで出会ったのが、ずいぶん昔のことみたいに感じる。
最高の相棒「だった」。
過去形なんだね……もう、お別れなんだ。
本当は、まだ離れがたい。3人でもっと冒険したかった。
だけど行かなくちゃ。
うにはこの世界でやらなきゃいけないことが、まだたくさんあるから……。
ケリッグに半ば無理やり押し付けられた報酬を握りしめ、ふたりに背を向けた。
エピローグ:金なんかいらねえよ、冬
…………。
・・・・・・
だめだ、こんなお別れは。
こんな湿っぽいの、全然スッキリしない!!
・・・・・・
こんなはした金……いるかーー!!!!
こちとら、闇の戦士様なんだよ!!
こことは別の遠い世界じゃ「英雄」って呼ばれてんの!
おまけに貯蓄も数千万あって、でっかい家に住んでんの!
そんなうに様が、子連れの賞金稼ぎから小金なんか受け取れるかーー!!
英雄のプライドなめんなーー!!
だからこのお金でさ、テイナーに美味しいものでもたらふく食べさせてあげてよ。
そんで、自分の装備も新調しなよ。
これから賞金稼ぎでバリバリ稼いでいくんでしょ?
そんな装備で大丈夫か?
……これでよし!
ありがとね、ケリッグ。
だけど、その報酬はやっぱり受け取れない。
それでもどうしてもと言うのなら……うにからの報酬だとでも思っておいて。
ケリッグはうにのことを「最高の相棒」と言ってくれた。
でもそれは、うににとっても同じだったんだよ。
短い間だったけど、泣いたり笑ったり……時にはギスギスしたこともあったっけ。
でもその全てが、今となってはキラキラした大切な思い出。
もちろんテイナーだって、大事な大事な教え子だ。
この先、この時代で過ごす人生が素晴らしいものになるよう、ずっと祈ってる。
……さよならは言わないよ。
またいつか会えるって、信じてるから。
また会おうね!
ケリッグ、テイナー!
仲間と別れ、うにはひとり別の道を歩み始める。
だがその足取りは思いの外軽やかだ。
どうかこの若きふたりの賞金稼ぎたちに、クリスタルの導きがあらんことを──。
そう、願いながら。
【完】
6.3の前にストーリー復習しよう
水臭いなあもう。仲間なんだから当然なのに~