続・ある男の過去
ボヴァイン討伐後。
アルバートたちの読みは外れていた。
ボヴァインを倒しても、地震が収まることはなかったのだ。
そんな中、ナイルベルトは淡く光る石を拾い上げる。
それは「魔光石」と呼ばれる石だった。
魔光石は、長い時間をかけて魔力を溜め込む性質のある石。
ボヴァインは、これに溜め込まれた魔力に引き寄せられたに過ぎない──
つまりこの地震の根本的な原因となっているのは、この魔光石だったのだ。
そして、ナイルベルトがこの鉱山を訪れた真の目的。
それこそが、この「魔光石」の入手だった。
しかしその一方で、この石を破壊しなければ鉱山は崩落。
麓の集落さえ危険に晒されることになる。
そしてその時はもう、目前に迫っていた。
今すぐに石を破壊するしかない、さもなくば──
『くそっ、くそっ……くそおおおおお!』
慟哭のような叫びが鉱山にこだまする。
彼は、選んだのだ。
選べるはずなどなかった……だが選ばざるを得なかったのだ。
魔光石は、ナイルベルト自身の手によって砕かれた。
その溜め込まれた魔力は、眩い輝きを放ちながらあるべきところへ還っていった。
アルバートは、苦渋の決断を下したナイルベルトに感謝の意を伝える。
そしてその決断に報いるためにも、一緒に友を救う方法を探したいと申し出た。
各地を旅し、様々な事件を解決していく傍らでその手段も見つかるかもしれない、と。
アルバートの誘いに考えを巡らせるナイルベルト。
彼の手には、いつの間にかクリスタルが握られていた──
こうして、ナイルベルトは新たなる絆を結んだ。
これから始まるその旅路で、彼は多くの人々を助け、やがて英雄となる。
しかしその生涯において、「友を救う」という自身の悲願が果たされることは遂になかった……。
友に眠りを
……意識が戻ると、プロネーシスはいつの間にかいなくなっていた。
モルド・スークに帰還して、ふたりに過去視の内容を共有することに。
ナイルベルトはプロネーシスとなって理性を失い、自身の目的すらわからなくなっていたとしてもテイナーを探し続けていたのかな。
だとしたらすごく、すごく悲しい……。
さっきまでテイナーの記憶はおぼろげなままだった。
でも実際にプロネーシスと対峙して、また彼の過去を知ったことでハッキリと実感できたみたい。
そしてかつての親友として、彼を静かに眠らせてあげたい、と……。
きっとそのために必要な力を持ってるのは、「虚ろ」を制御することのできるテイナーだけだ。
だからうにたちは全力でテイナーをサポートする!
3人で力を合わせれば、きっとできるよ!
敵と思われていたプロネーシスの悲しい真実を知った、うに一行。
悲しみの連鎖を断ち切るため、今は己を磨きながら時を待つ──。
【つづく】
「虚ろ」に吸い込まれたテイナーを救い出すためには、膨大な魔力を持って異世界に繋がる穴を開ける必要がある。
しかし、ナイルベルトひとりの魔力では到底それを賄いきれない。
だからこそ彼は長い間、探し求めてきたのだ。
地脈を崩壊させるほどの魔力を溜め込んだ、その石を……。