感情と理性の狭間で
ついに、最後の闘神「ズルワーン」との戦いへ。
ウヌクアルハイと共に現地入り。よーしやるz……
レグラ率いる帝国軍第VI軍団が侵入したのは、これで二度目。
でも、今度こそ誰も彼らを誘い込むなんてことはしてないはず。
とすると、どうやって……?
そこに現れたのは目下ウワサの帝国の将・レグラ。
彼の話によると、封印は内側から破られていた……
つまり、封印を破ったのは覚醒しかけているズルワーンの力ってことだよね。
そして中では、ズルワーンのテンパードたちが覚醒の儀式を始めている。。
つまり帝国軍がここに侵入した目的は、技術の略奪なんかじゃない。
覚醒を止めるため、生命を賭して戦おうとしているから。
そして軍団長であるレグラ自身も、その戦いに向かうつもりなのだ!
超える力持ちがいないのに、そんなん絶対無茶だって!!><
そしてレグラは、うにたちに共闘を申し出てきた。
ヤシュトラやウリエンジェの気が乗らないのはわかる。
イゼルを喪った悲しみだって、忘れたわけじゃない。
そう簡単に何もかも水に流すなんて、そんな物分かりの良さは持ち合わせてないよ。
だけど……レグラの言い分だってわかるんだ。
こちらが大切なものを奪われたように、うにたちだって相手の大切なものを奪ってきた。
自分たちの信じる正義という、大義名分の元に。
それに、ここでズルワーンを止められなかったらどうなる?
それこそ、イゼルや志半ばで散っていった人達に合わせる顔がない。
憎しみや己の正義だけに囚われていては、
世界を守るなんてきっと無理だと思うから……
……まずは鬼神を止めよう
名将、異国の地に消ゆ
ズルワーンが封印された場所へ駆けつけると、そこは既に目を覆いたくなるような凄惨な現場となっていた。
先に突入した帝国兵たちがテンパードと化し、同士討ちが始まっていたのだ。
しかし、そこで絶望に呑まれているほどの時間的余裕はない。
ズルワーンにエーテルを注いでいる4つの装置。
これを即座に壊さなければならないからだ。
この中でテンパード化の恐れがないのは、うにとクルルさんとウヌクアルハイ……
え 一人足りない
と思ったら、レグラが引き受けてくれるって。。
瘴気を浴びなければ大丈夫って、そりゃそうだけどさあ。本当の本当に大丈夫なんだよね?
けどここで騒ぎ立てたって代案を出せる訳でもない。
ここは大人しく、彼の覚悟を信じるしかないよね。
* * *
レグラは、自分の力に自信が持てないウヌクアルハイを鼓舞する気遣いを見せた。
そんな姿を見ていたら……
彼が皇帝に取り立てられ、部下に慕われる理由もわかるような気がしてきた。
この戦いが終わったら、レグラは再びうにたちの前に敵として立ち塞がるだろう。
でも一人の人間としての彼を知ってしまったから……なんだか複雑な気持ち。
* * *
──その時だった。
ぎゃ!ウヌクアルハイが危ない!!
覚醒しかけてるズルワーンが、ウヌクアルハイに襲いかかってる!
すぐに助けなきゃ!と焦っていると……
レグラが身を呈してウヌクアルハイを庇ってくれてる!
そしてズルワーンの巨大な太刀に臆することなく、何とその太刀さえも破壊したのだけれど……
・・・・・・
やだよ
ねえ 何なのこれ
重い、とてつもなく重すぎる一振りがレグラを襲い。
そして彼は、地に伏した。
……だから、大丈夫じゃないって言ったじゃん。
こんなの、ずるいよ。
貴方のせいでイゼルを喪って……憎くて憎くてたまらないはずだったのに。
こんなお別れじゃ、とても憎みきれないじゃん。。
帝国軍第VI軍団長・レグラは、遠い異国の地にて生命を散らした。
帝国の将たる彼は、暁の血盟にとって敵対する立場の人間であった。
しかし彼の矜持や生き様は、ひとりの人間として尊敬に値するものでもあった。
彼の信じる正義は、もう一つの正義であり。
──彼もまた、確かに「誰かの英雄」であったのだ。
・・・・・・
レグラの作ってくれた好機を決して逃さない!
ズルワーン……必ず倒す!!
英雄になれなかった君へ
ズルワーン討滅後。
これにて「三闘神」討滅計画、そのすべてが完了した。
払った犠牲は、決して小さなものではなかった。
レグラの遺体は、生き残った帝国兵たちによって故国に移送されるとのこと。
帝国との共闘に難色を示していたヤシュトラやウリエンジェも、今はただそれを送り出すほかなかったって。。
そしてウヌクアルハイにとって、今回の戦いは心に大きな傷を負ったことだろう。
彼が悪かったわけじゃない。何もできなかったわけでもない。
けど、うにたちがそれをいくら声高に叫んだところで、きっと響かない。
こういう問題は、結局のところ自分で……そして時間で解決するしかないのだ。
仲間としてできることって何だろうって考えたけど。。
今は何も言わず、ただそっと側にいるのがいいのかなって
石の家にて
その後、みんなで石の家へ帰還。
暁の間にて、ウヌクアルハイは自らのこと、そして故郷のことについて語り始めた。
第十三世界・通称「ヴォイド」。
その世界が滅亡の危機に晒されている時、「超える力」を持って生まれた者。
生まれながらに世界を救う力を持ちながら、生まれるのが数年遅かったが為に世界を救えなかった……「英雄になれなかった」者。
それが、ウヌクアルハイの正体だった。
蛮神に対抗するための手段として、ヴォイドでは「聖石」に蛮神の力を封じる魔法が発達していた。
しかしその力はやがて濫用され、聖石を操る英雄たちはエーテルを奪い合う「魔」に変貌。
魔と魔の争いはエーテルの枯渇を加速させ……ついに「闇の氾濫」が起きた。
瞬間、世界は「無」と化したのだった。
この世界で目にしてきた、ヴォイドの妖異たち。
それらが人や生き物の成れの果てだったなんて……残酷すぎるよ。。
だけど、続くウヌクアルハイの話は更に衝撃的なものだった。
今まで明かされることのなかった、ウヌクアルハイの「主」。
その正体は、アシエン・エリディブス……あの白法衣の男だったのだ!
エリディブスは、消えかかっていたウヌクアルハイの魂を次元の狭間へ引き上げ、この世界の理を説いた。
この世にはいくつもの次元が存在していること、「闇」と「光」の争い、その均衡が瓦解した時に起こる災厄……
そしてこの原初世界もまた、世界の危機に瀕していること。
エリディブスの話を聞いたウヌクアルハイは、「使いの者」として原初世界へ送り込まれることを望む。
故郷の悲劇を繰り返さない、今度こそ世界を救うのだと決意して──。
闇の氾濫が起きた時、ゼロも次元の狭間に呑まれたって言ってたな。
そしてある日、その狭間に「小さな穴」が空いているのを見つけて脱出できた、って。。
……これ、このウヌクアルハイの話と関係あるのかなあ?
関連部分を振り返りたい場合はこちら↓
* * *
あの日の決意にも関わらず、いざという時にためらいが出てしまった。
これでは世界を救えるはずがない、と自分を卑下するウヌクアルハイ。
そんな彼に、ウリエンジェ、ヤシュトラ、クルルさんはそれぞれ温かな言葉をかける。
『英雄が世界を救うのではない。世界を救った者が、英雄と呼ばれるのだ』
だけど、ひとりで出来ることの規模なんてたかが知れている。
それにこの世界で英雄と呼ばれている人物だって、一人じゃなーんにもできやしない。
変わっているのは「超える力」を持っていることくらい。
後はどこにでもいる普通の冒険者なんだよ。
世界を救ったのは、うにだけの力じゃない。
世界を救った者が英雄と呼ばれるのなら……本当は、みんなが英雄なんだ。
そしてここ「暁の血盟」では、一緒に英雄となってくれる仲間を募集中だよ!
超える力を持っている人なんて、きっとうってつけじゃないかな〜って思うんだけど……
どうかなあ?^^
・・・・・・
こうして、三闘神との長いようで短い戦いは幕を閉じた。
決して万事が上手く行ったわけではない。
生じた迷いが再び顔を出し、立ち止まる日も来るだろう。
押し殺した哀しみが溢れ、ふと涙をこぼす夜も来るだろう。
だが、別れがあれば出会いもある。
暁の血盟は、今ここに新たな仲間──英雄となる少年・ウヌクアルハイを迎えた。
【完】
また帝国軍が魔科学研究所に侵入しただとー?!!?